随筆風小説 プレイリスト

トラック09 Oblivion ナノ

闇を照らす光で、僕の影が映し出される。フードを被って、手をポケットの中に入れて、暗闇の中を歩いている。 まるで闇武者だ。

僕は、本当はのんびりで丁寧にやりたい性格だった。だから、時間が決められると焦って何も出来ない。だから、そんな僕を周りは許してくれなかった。期限内に終わらないから、いつも怒られてばかり。

だが、僕はある時、気づいた。僕は、全部やりたくなってしまって、それを丁寧にやるから、時間内に終わらないんだと。だから、やれることをやるだけにした。そうしていく内に、どんどん素早くなっていった。

そうして、素早く出来る自分がのんびりな自分を包み込むように隠すことになる。いつの間にか、のんびりな性格である本当の自分を忘れてしまう。

そして、今に至る。

夜に行動することが多く、どんな小さな明かりでも、昼のように見分けがつく。だから、つまずくことなく、素早く物事を進めていく。

でも、どんなに慣れて忘れてしまっても、違和感が残る。これは、本当の僕なんだろうか。どう抗っても、演技をしているような気がして本当の僕ではない気がする。

僕は立ち止まり、目を閉じて、心の声を聞く。

のんびりな自分が、主張し始める。僕はこんなんじゃない。本当は、素早くやるなんて、自分らしくない。もっと丁寧にやりたいし、気が済むまで続けたい。

素早さな自分が浸透してるから、本当はこうじゃないと言ったところで、信じてもらえない。演じているだけなのに。

ガッと素早い自分が出てくる。演じているということはないだろ。その時の自分だって本気でやってる。覚悟をもってやってるはずだ。そんなことを言うなよ。

心が落ち込んでいるのんびりな自分に素早い自分がわいわい言っている様子を見て思うことがある。

それでも、素早い自分ものんびりな自分も僕なんだ。それだけは、分かる。そして、どっちの自分でも、好きだ。

暗闇の中を、また歩きはじめた。

※この作品はフィクションです。実在の人物、団体とは関係ありません。

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参考楽曲

Oblivion ナノ

あとがき

大好きなナノさんの曲。たくさん聴いてふと出てきた小説。2024年1月25日

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