随筆風小説 プレイリスト
トラック0 抜錨 ナナホシ管弦楽団 Cover ウォルピスカーター
僕は、ある時からずっと暗闇の中にいる。 何故、ここにいるのかと言われると成り行きとしか言えない。 過去から遡ってもいつからここにいるのか分からなくなってる。いつの間にかここにいた。 どこにも動きたくなくて、しゃがんで下を向いていた。
僕は、何も出来ない。何をしたいのかも忘れたし、昔、夢だった事なんて忘れた。 僕のことを見てくれる人なんて誰もいない。だから、ずっとここにいる。
そんな時にあの人に会った。
「あなたはこんなところで何をしているの?」
顔を上げると、黒の桜柄の着物を来た女の人がこちらを覗いていた。顔は暗くて見えない。
「何って、どこにもいけないからここにいるんだけど。」
「どこにもいけない、ね。こんな森の中で。」
女の人は、僕を寂しそうな顔して見つめていた。周りをみると、木々がそびえ立っていた。
「あなたは、何か夢はないの?」
「え、」
「あなたが今やっていることって、きっと昔やりたかったことではないよね。」
僕は一瞬考えた。
「考えてみると、そうかもしれない。確かに、今やりたいことではあるけど、昔の自分がみたら、意外な道だったかもしれない。」
「だから、ここにいるんでしょ。あなたが何をしたらいいのか分からなくなって。」
言われてみるとそうかもしれない。
「だったら、昔、夢だったことをやってみるといいよ。」
「夢か、」
ふと考えを巡らせる。
「そういえば、僕は小説家になりたかった。」
「そっか。小説家ね。」
女の人が指を差して言った。
「きっとあっちに行くと、たくさんの物語が見れるよ。ここにいてもしょうがないし、行ってみるといいよ」
女の人に言われて、道なき道をすすんだ。それが、どれだけ孤独で茨の道か知らずに。
でも、立ち止まっていても、進んでも同じなら、自分の好きなことをしていきたい。
※この作品はフィクションです。実在の人物、団体とは関係ありません。
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参考楽曲
抜錨 ナナホシ管弦楽団
抜錨 ナナホシ管弦楽団 coverウォルピスカーター
あとがき
一周年記念小冊子のために書き下ろした小説*一周年があっという間 2024.07.09
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