短編小説 魔道書

第6話 夜の召喚

夜になると、誰かを見下したくなる。 これは何のせいなのか、分からないが、不意に心が傷ついてそのから黒い感情が溢れてくる。 これは、上から見下す黒い意地という名愉快。 そして、何故か黒い笑いが溢れる。 急にもどってきた。これがないと僕ではない。 やっぱり切り捨てることなんてできないな。 最近は無意識に手放していたか。

そしてよみがえる、あの夜の声。

『フフフ、あなたの思い通りにはならないよ』

いつも見ていた、丘から見える高層ビル群。 恨んでいるわけではないが、きっと世間の思惑に溺れたくないという覚悟から来たのだろう。 でも、この言葉で救われていたのは事実だ。

「こんなに、心が荒(すさ)んでいるのに、どうして人への対応がこんなに穏やかになるのかか 分からないな」

『それは、他の人には見せてない闇の部分がある からだよ。陰と陽があるから人間として奥深くなるんだ。』

確かに、夜にんで歩くことが好きになっていた。 色が少なくなり、五感のすべてを感じることができる。 今の時期だと、金木犀の甘い香り、鈴虫のリンリン と鳴く音、そして心地よい風の感触。 全て光が良いというわけじゃないことを知り始めている。

「それもそうだね。感情を殺すことはあまりよくないし。」

『でも、前はそうだったんだろ。感情を殺して生きてた。 それか正解だと思ってたんだろ』

「・・・正解だとは思ってなかったけど、そうでもしないと 保っていらなかったから。」

自分の中には心の刃がある。それはやすやすと人の心を傷つけ、見せつけると大半嫌われる。 しかし、気ををつけないとすぐに出てしまう。封印するために感情を殺していたのだ。

今は、出さないように丁寧に丁寧に隠してある。 ある人が言っていたように人の6倍謙虚にするように気をつける。 ま、よっぽどのことがない限り怒る(起こる)ことはないだろうけど。

いつの間にか神社に来ていた。 参拝を済ませ、なんとなく、神社の廊下に座った。 夜の神社に座って感じるのはちょっとした罪悪感 と心地よさ。

「でも、そんな過去の自分も、今の自分も好きだよ」

『そうだな、無駄なことなんて何一つないんだからな』

「1つ1つのことが自分の力になっている。そして、自分の力にする。 それが自分だけの人生なんだと思う。」


※この作品はフィクションです。実在の人物、団体とは関係ありません。

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